酸素と二酸化炭素の意外な関係
酸素は「吸う」だけでは届かない
「最近、疲れが取れない」
「しっかり深呼吸しているのに、頭がボーッとする」
そんなお悩みはありませんか?
私たちは普段、「酸素=善」「二酸化炭素=悪(老廃物)」と考えがちです。だからこそ、新鮮な酸素をたくさん取り込もうと必死に深呼吸を繰り返します。
しかし、実は「二酸化炭素」が足りないと、いくら酸素を吸っても身体の細胞には届かないという事実をご存知でしょうか?
今回は、身体の不思議なメカニズム「ボーア効果」についてお話しします。
血液中の「配送トラック」の話
私たちが呼吸で取り込んだ酸素O2は、血液中の赤血球にある「ヘモグロビン」と結びついて全身に運ばれます。
ヘモグロビンを「酸素を運ぶ配送トラック」だとイメージしてください。
トラック(ヘモグロビン)は、肺で荷物(酸素)を積み込み、筋肉や脳などの「現場」へ向かいます。
しかし、現場に着いたとき、トラックの扉が開かなければ、荷物は届けられませんよね?
実は、このトラックの扉を開ける鍵となるのが「二酸化炭素(CO2)」なのです。
ボーア効果とは?
専門用語で「ボーア効果」と呼ばれる現象があります。
これは、「血液中の二酸化炭素濃度が高くなると、ヘモグロビンは酸素を離しやすくなる」という生理学的な法則です。
つまり、こういうことです。
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身体を動かしたり働かせたりすると、その場所で二酸化炭素が発生する。
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「お、ここは二酸化炭素が多いな(=たくさん働いて酸素を必要としているな)」とヘモグロビンが感知する。
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そこで初めてヘモグロビンは酸素を切り離し、細胞に供給する。
逆に、口呼吸などでハァハァと息を吐きすぎて体内の二酸化炭素が減りすぎると、ヘモグロビンは酸素を抱え込んだまま離してくれません。
結果、「血中に酸素はあるのに、細胞は酸欠状態」ということが起きてしまうのです。
酸欠を防ぐための「正しい呼吸」
では、効率よく酸素を全身に巡らせるにはどうすれば良いのでしょうか?
ポイントは「二酸化炭素を適度に体内に留めること」です。
- 口呼吸をやめて鼻呼吸にする口呼吸は換気量が多くなりすぎ、二酸化炭素を必要以上に吐き出してしまいます。鼻呼吸は抵抗があるため、適切な量の空気を吸い、吐くことができます。
- ため息や、ゆっくり長く吐く呼吸一度しっかりと吐き切ることで、次の呼吸の質が高まります。また、ゆっくりとした呼吸は自律神経を整えるだけでなく、体内のガス交換のバランスを最適化します。
- 軽い運動ウォーキングなどで軽く体を動かすと、筋肉から二酸化炭素が発生します。これが呼び水となって、さらに酸素が筋肉へ供給されやすくなり、疲労物質の除去が進みます。
まとめ:二酸化炭素は「悪者」じゃない
二酸化炭素は単なる老廃物ではなく、「酸素を必要な場所に届けるためのパスポート」のような役割を果たしています。
「なんだか身体が重いな」と感じたら、無理にスーハースーハーと深呼吸をするのではなく、口を閉じて、静かに鼻で息をしてみてください。
体内の二酸化炭素バランスが整えば、自然と体の隅々まで酸素が行き渡り、本来の回復力が発揮されるはずです。
当院では、呼吸が浅くなる原因となる「肋骨や背骨の動き」の改善も行っています。呼吸のしづらさを感じる方は、ぜひ一度ご相談ください。
